館長挨拶

静岡市歴史博物館 館長 中村 羊一郎
静岡市歴史博物館 館長 中村 羊一郎

ようこそ、静岡市歴史博物館へ

静岡市民のあつい思いに支えられた静岡市歴史博物館には、三つのミッションがあります。ひとつは静岡の歴史と文化に関する貴重な資料を収集・保存・展示して後世に伝えること、ひとつは歴史文化都市、静岡の魅力を内外に発信して観光の拠点となること、そして、時代を担う子どもたちのための学習の場になることです。

館内の主な展示を紹介しましょう。まず、当館の建設に際しての事前発掘調査で偶然発見された戦国時代末期の道の遺構を見下ろしながらスロープを上がってください。映像でよみがえった駿府城下の住民が皆さまを家康外交の世界へとご案内します。家康の大御所時代、駿府が日本の首都のような役割を果たしていたことがお分かりいただけます。次には貴重な古文書などとともに、戦国の世を勝ち抜いた家康の生涯を象徴する、2 領の鎧が皆様をお迎えします。元服にあたり今川義元から贈られた腹巻と、晩年に着用した歯朶具足です。これは現代最高の甲冑師が3 年の歳月をかけて復元したもので、家康着用当時の色彩と輝きが見事によみがえりました。合戦図屏風に描かれた華やかな武将たちの姿が体感できます。続いて戦国大名今川氏のすべてを、歴代当主の木像と古文書によって再現しました。今日の静岡の基礎を築き、家康を育てた今川氏の全貌を明らかにした全国唯一の内容です。

3 階に上がりましょう。正面にあるのは豪華な東海道図屏風。江戸時代初期の東海道の風景や人々の様子が詳細に描かれています。続いて、江戸時代の駿府町人の暮らしぶり、さまざまな地域産業の紹介、さらに明治日本の近代化を進めることになる最高の頭脳が集まっていた静岡藩、国際貿易港としての清水港の発展の様子が展開されます。そして、静岡藩主、徳川家達直筆の「彰往考来(しょうおうこうらい)」の額が皆様を現代の静岡へと送り出してくれます。過去を明らかにし、未来に生かす、まさに歴史博物館の意義を語りかけた見事な筆跡です。

展示をご覧いただいたら、駿府城巽櫓を見ながらカフェで一休み。そうそう、この博物館の建築そのものにも注目してください。世界的な建築ユニット、SANAA の作品です。では、駿府城下町の町割りが今も残る「おまち」に繰り出しましょう。この博物館を静岡観光の出発点として、思いっきり活用してください。

博物館コンセプト

歴史文化から静岡の未来をつくる

静岡の過去を学び、今を知る。
そして、未来を考える。

静岡市歴史博物館は、私たちの先人が築いた歴史の積み重ねにより、現在のまちの姿があることを踏まえ、静岡市ならではの大切な歴史的・文化的資源の価値と魅力を発信するとともに、都市イメージ「大御所家康公と駿府」の確立を目指します。
そして、静岡市を訪れる人々に、静岡市への憧れの喚起を図り、歴史的な名所の核となるとともに、市民の皆さんが郷土への愛着と誇りを深めることで、活躍の場や生活の拠点とするなど人口減少対策に寄与する役割を担います。
また、歴史文化のまちづくりの拠点として、「世界に輝く静岡」の実現に寄与し、静岡市の新たな未来を市民とともにつくっていきます。

博物館の役割

歴史
探求

静岡市の歴史を語る

静岡市の歴史について、徳川家康や今川氏、東海道のほか、多角的かつ深く踏み込んだ調査及び研究、展示を行います。

地域
学習

「学び」のコーディネート

市民団体や教育機関と連携することにより「学びの場」を提供し、地域学習の支援、人材の育成を図ります。

観光
交流

集客の核となり、地域に誘う

市域の観光の拠点として、豊かな地場産業や観光スポットなど静岡の魅力を発信します。

施設コンセプト

外観パース図

歴史博物館は、城下町や駿府城大手御門から二ノ丸堀に続く雁行動線を建物内部まで立体的に延長し、街並みと建物が一体となることで、街並みから建物まで伸びる『人の道』を形づくるものです。

また、しっくい調塗装の外壁・1階廻りの木製建具・庇や下屋などにより、歴史的景観との調和を図ることで、「過去と今をつなぎ、未来をつくる」という役割を果たします。

さらに、石垣の石・樹木が魅せる鮮やかな緑の景色の中に、素材感を活かしたアルミエキスパンドメタルの外装をかけ合わせることで、人々を魅了する外観をもつ新たなランドマークとなります。

建設前の発掘調査で見つかり、建物内に取り込んだ『戦国時代末期の道と石垣の遺構』は、当時の情景を肌で感じられ、歴史を学び、気付きの場となり、新たな一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。

建築概要

構造
鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
階数
4階
敷地面積
4,990.51㎡
延床面積
4,885.86㎡
建築面積
2,284.96㎡
基礎
直接基礎
高さ
24.5m
展示室
1,001.47㎡
収蔵庫
561.26㎡
設計
(有)SANAA事務所

建築設計者

SANAA

SANAA

妹島和世氏と西沢立衛氏による建築ユニット。
1995年 東京にて設立。
2004年 ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 金獅子賞、
2010年 プリツカー賞、
2022年 第33回高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)
など数多くの賞を受賞。
主な作品に、金沢21世紀美術館、Rolexラーニングセンター(スイス)、 ルーヴル=ランス(フランス)、荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)など。