館長挨拶

静岡市歴史博物館 館長 大石 学
静岡市歴史博物館 館長 大石 学 おおいし まなぶ

1953年 東京都出身
東京学芸大学卒 近世日本史(江戸時代)専攻

<元職>

東京学芸大学副学長、時代考証学会会長、日本芸術文化振興会監事

<前職>

東京学芸大学名誉教授

<論文>

  • 日本近世国家における公文書管理―享保の改革を中心に―
  • 外様大名―柳氏の転封と分知―近世大名の一側面―
  • 享保改革の歴史的位置 他

<著書>

  • 『享保改革の地域政策』
  • 『大岡忠相』
  • 『江戸時代の外交戦略』
  • 『家康公伝 現代語訳徳川実記』
  • 『首都江戸の誕生』 他

<時代考証>

  • NHK大河ドラマ『新選組!』『篤姫』『龍馬伝』『西郷どん』
  • NHKドラマ10「大奥」 など

館長就任にあたって

このたび静岡市歴史博物館館長に就任しました。中村羊一郎初代館長の後を承けて身が引き締まる思いです。

地球規模で環境・資源・格差・戦争・疫病など諸問題が深刻化する今日、西洋主導の近代化への懐疑・不安の高まりを背景に江戸時代が見直されています。それは、近代化に舵を切った明治維新以前の古い封建時代という従来のイメージから、長期の「平和」と「日本型文明」の時代という新たなイメージへの転換です。実際、江戸時代は世界史でも稀な250年以上国内外で戦争のない「徳川の平和Pax Tokugawana」を実現しました。この「平和」は、国内的には100年以上の戦国時代を克服し、対外的には豊臣秀吉による朝鮮・中国との大規模戦争の戦後処理を実現することにより達成した貴重なものでした。しかも「徳川の平和」は、同時代の来日外国人たちが高く評価した江戸社会の教育やリテラシーに基礎づけられたことも重要です。この「平和」のもと、リサイクルシステムや互助性・共同性を備えた社会が成立し、今日「和風」「日本風」と呼ばれる独自の「文明」を成熟させたのです。

「平和と文明」の江戸社会を開幕させたのが徳川家康でした。家康は、日本史上初めて東日本の江戸に幕府を開き、将軍退職後は大御所として駿府城で外国人を含むブレーンたちと日本の未来を構想しました。この駿府城内に設けられた歴史博物館は、家康を中心に、戦国大名今川氏や駿府(静岡市)地域史などを対象に活動を展開しています。私は、これらの活動をより充実し、市民の皆様が、地域を知り、江戸時代を学び、日本と世界の未来を思う場として環境を整備し発信力を強化する所存です。亡父が生れ愛した静岡市との縁をかみしめつつ、就任のご挨拶と致します。

博物館コンセプト

歴史文化から静岡の未来をつくる

静岡の過去を学び、今を知る。
そして、未来を考える。

静岡市歴史博物館は、私たちの先人が築いた歴史の積み重ねにより、現在のまちの姿があることを踏まえ、静岡市ならではの大切な歴史的・文化的資源の価値と魅力を発信するとともに、都市イメージ「大御所家康公と駿府」の確立を目指します。
そして、静岡市を訪れる人々に、静岡市への憧れの喚起を図り、歴史的な名所の核となるとともに、市民の皆さんが郷土への愛着と誇りを深めることで、活躍の場や生活の拠点とするなど人口減少対策に寄与する役割を担います。
また、歴史文化のまちづくりの拠点として、「世界に輝く静岡」の実現に寄与し、静岡市の新たな未来を市民とともにつくっていきます。

博物館の役割

歴史
探求

静岡市の歴史を語る

静岡市の歴史について、徳川家康や今川氏、東海道のほか、多角的かつ深く踏み込んだ調査及び研究、展示を行います。

地域
学習

「学び」のコーディネート

市民団体や教育機関と連携することにより「学びの場」を提供し、地域学習の支援、人材の育成を図ります。

観光
交流

集客の核となり、地域に誘う

市域の観光の拠点として、豊かな地場産業や観光スポットなど静岡の魅力を発信します。

施設コンセプト

外観パース図

歴史博物館は、城下町や駿府城大手御門から二ノ丸堀に続く雁行動線を建物内部まで立体的に延長し、街並みと建物が一体となることで、街並みから建物まで伸びる『人の道』を形づくるものです。

また、しっくい調塗装の外壁・1階廻りの木製建具・庇や下屋などにより、歴史的景観との調和を図ることで、「過去と今をつなぎ、未来をつくる」という役割を果たします。

さらに、石垣の石・樹木が魅せる鮮やかな緑の景色の中に、素材感を活かしたアルミエキスパンドメタルの外装をかけ合わせることで、人々を魅了する外観をもつ新たなランドマークとなります。

建設前の発掘調査で見つかり、建物内に取り込んだ『戦国時代末期の道と石垣の遺構』は、当時の情景を肌で感じられ、歴史を学び、気付きの場となり、新たな一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。

建築概要

構造
鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
階数
4階
敷地面積
4,990.51㎡
延床面積
4,885.86㎡
建築面積
2,284.96㎡
基礎
直接基礎
高さ
24.5m
展示室
1,001.47㎡
収蔵庫
561.26㎡
設計
(有)SANAA事務所

建築設計者

SANAA

SANAA

妹島和世氏と西沢立衛氏による建築ユニット。
1995年 東京にて設立。
2004年 ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 金獅子賞、
2010年 プリツカー賞、
2022年 第33回高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)
など数多くの賞を受賞。
主な作品に、金沢21世紀美術館、Rolexラーニングセンター(スイス)、 ルーヴル=ランス(フランス)、荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)など。